【コラム】写真報告書の「あとからの問い合わせ」を減らす視点
①なぜ「問い合わせ」を軸に考えるのか
建物調査や点検、ホームインスペクションの仕事では、 「写真付き報告書を書くのが一番しんどい」 という声をよく聞きます。
・現場で口頭で説明するのはいいけど、写真を貼ったり文章を書くと時間がかかる
・委託元指定フォーマットがあって自由度が低い
といった定番の課題をはじめ、さらに、多くの現場で聞くのがこうした悩みです。
・納品後に、電話やメールで同じ質問が何度も来る
・社内の別部署や管理会社から、「この指摘って結局どういう意味?」と聞かれる
・担当変更などで、過去の報告書の解説を求められる
つまり、「良い報告書かどうか」は、見た目のきれいさだけではなく、納品後にどれくらい“説明の追加”を求められるか(問い合わせの量)という観点でも測れるはずです。
もちろん、問い合わせがゼロになることはありません。 それでも、
・伝わらなかったことで生まれる“余計な問い合わせ”を減らす
・電話が来ても、報告書を一緒に見ればすぐ話が通じる
この状態を目指すことで、顧客の不安も、現場の負荷も両方下げられるのではないか。
そのような前提をもとに、問い合わせの原因や対策について考えてみました。
②誰の“どんな問い合わせ”を減らしたいか
問い合わせを減らすと言っても、誰からの、どんな問い合わせかを分けて考える必要があります。
建物調査や点検、インスペクションの報告書には、典型的に次のような読み手が登場します。
- ・中古住宅の買主やオーナー
- ・不動産仲介会社や管理会社の担当者
- ・社内の設備・総務・PM部門
- ・将来この物件に関わる施工会社や金融機関
それぞれから実際に来がちな問い合わせを、少しだけ具体化すると──
買主・オーナーからの問い合わせ例
- ・「結局、この建物は買っても大丈夫なんでしょうか?」
- ・「この指摘は、どれくらい急いで対応した方がいいですか?」
仲介・管理会社からの問い合わせ例
- ・「お客様には、どこまで強く伝えるべきでしょうか?」
- ・「“不具合”とありますが、どの程度のリスク感と受け取れば良いですか?」
その他問い合わせ例
- ・「どの部分を、今年・来年の修繕計画に入れておくべきですか?」
- ・「優先順位が分からないので、説明してほしいです」
こうした問い合わせの多くは、報告書の中に、
- ・優先度
- ・時間軸(短期・中期・長期)
- ・リスクのニュアンス
が書き分けられていないことが原因になっているケースが少なくありません。
主な読み手を想像しながら、「よく来る問い合わせベスト3」を挙げてみると、 どの情報が“足りていないか”が見えやすくなります。
③時間軸から逆算する:いつ、誰に問い合わせされるか
問い合わせが発生するタイミングを考えてみるもの重要です。
- ・納品直後:「気になる指摘」についての確認
- ・入居後/稼働後:別の不具合が出たとき、「前の報告書ではどう書いてあったか」の確認
- ・修繕計画や工事見積の段階:「どこまでやれば十分か」の相談
- ・クレームや事故の際:「当時の調査範囲」「指摘の有無」の確認
つまり、報告書は「納品した直後」だけではなく、数ヶ月後や数年後に、別の担当者が開く前提で設計した方が、トータルでの問い合わせは減ります。
「半年後の自分や、別の担当者が読んだとしても、当時の調査内容を理解できる」を基準にすると、「残すべき情報」と「別管理でもいい情報」の線引きもしやすくなります。
④現場から逆算する:「書けない設計」は問い合わせの元
問い合わせが多くなる報告書には、現場側から見たときの“書きづらさ”という原因もあります。
- ・自由記述が多く、その場では「後で書こう」とメモが残らない
- ・写真の撮り方と報告書の構成がバラバラで、後から整理しきれない
- ・オフィスで書き起こす過程で、ニュアンスが抜け落ちる
こうした状況だと、どうしても「書きやすい言い回し」(=無難で抽象的な表現)が選ばれやすくなり、読み手にとっては「結局どういう意味?」という問い合わせにつながります。
一方、現場にとって書きやすい設計は、たとえば次のようなイメージです。
- ・端的な一覧表+短い一言メモで最低限は成立する
- ・報告書の構成や写真の順序に惑わされない
- ・コメントすべき内容がある程度事前に定義できる
「書きやすい=余計な問い合わせが減る」と考えると、 報告書の設計は、読み手だけではなく書き手のオペレーションからも考える必要があります。
⑤最小限ここだけ変える:3つの“問い合わせ削減ポイント”
全部を一気に変える必要はありません。 よくある問い合わせを整理してそれにあった対策が効果的です。
その上で、例えば、次の3か所だけを変えるといった始め方が効果が出やすいです。
5-1 サマリーで「何に注意すべきか」を明示する
最初の1ページで、建物と調査結果の“ざっくり像”が伝われば、「結局、この建物はどういう状態なんですか?」という漠然とした問い合わせは減ります。例としては、次のような一文です。
- ・「築25年相応の劣化は見られるが、現時点で構造上の大きな懸念は限定的。」
- ・「雨漏りに関する指摘が複数あり、数年以内の対策検討が望ましい。」
このように、
- ・どのテーマに注意が必要か(構造/雨仕舞い/設備 など)
- ・どの時間軸で考えるべきか(短期/中期/長期)
をサマリーで示しておくと、優先的な情報を伝えられ漠然としたモヤモヤを減らせます。
5-2 指摘の書き方を「事実+意味」にそろえる
問い合わせの定番が、「この“指摘”って、どれくらいのレベルなんですか?」というものです。
これは、記載が「事実」で止まっていることが原因になりがちです。
NG例:
「北面外壁にひび割れを認めます。」
OK例:
「北面外壁に〇mm程度のひび割れを複数確認。
雨水浸入などのリスクを考えると、今後の劣化進行を見越して早期の補修検討が望ましい。」
具体的な補修内容や金額まで書かなくても、すぐ危険なのか?・様子見でよいのか?・将来のコストに影響しそうか?といった「意味」を一文添えるだけで、 「結局どう受け止めれば良いのか」という問い合わせはかなり減ります。
5-3 写真の使い方を「問い合わせを受けたときの説明」に合わせる
写真は、問い合わせ対応のときに一緒に見返す資料でもあります。
- ・詳細な状態が分かるアップ写真
- ・どこを撮影したかわかるような写真と図面の紐付け
を意識して表現しておくことで、問い合わせが来たときに自身を助けてくれます。
「報告書の3ページの“②”ひび割れ写真を見てください。場所は図面上の“②”です」と一緒に確認できれば、電話口で長々と説明する必要はなくなります。
⑥おわりに:報告書は「未来の問い合わせ」を設計するもの
良い報告書とは何かと聞かれたとき、 「きれい」「情報量が多い」「写真が豊富」 といった答えが返ってくることが多い。
もちろんそれも大切ですが、現場と顧客の両方の立場から見れば、
“あとからの問い合わせが減る”報告書
という評価軸も、かなり実務的です。
- ・読者が「何に注意すべきか、対応いつ必要な建物なのか」をイメージできること
- ・あとから別の人が読み返しても、状況と判断が理解できること
- ・仮に問い合わせがあったとしても、共有資料として有効であること
- ・担当者が書きやすい設計になっていること
これらが満たされていれば、 問い合わせはゼロにはならなくても「必要な問い合わせ」だけに近づいていきます。
まずは、
- ・サマリーの構成
- ・指摘の書き方(事実+意味)
- ・写真と図面の紐付け
このうちどれか一つだけでも見直してみる。
その一歩が、結果として「問い合わせが減る報告書」に近づくのではないでしょうか。
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