【コラム】ホームインスペクションに必要な”伝え方・進め方・使われ方”
ホームインスペクションは、住宅取引の安心を高める有効な選択肢です。
しかし、インスペクターの現場の感覚として、問い合わせは増えても実施率が伸びきらない。。。
その背景には、需要の欠如というより「伝え方・進め方・使われ方」の設計に改善余地があります。
本コラムでは、顧客視点(買主・売主・仲介)でホームインスペクションの実施を妨げる要因を整理し、第三者性を保ちながら今日から改善できるポイントを整理してみました。必要とされるホームインスペクションを目指しましょう。
サマリー:ホームインスペクションの実施を妨げる要因
- ① 診断結果が顧客の「意思決定」に結び付いていない
- ② 「報告書」が理解・活用しづらい
- ③ 「スケジュール」が顧客に寄り添えていない
- ④ 「価格・調査範囲」が複雑で紛らわしい
要因1:診断結果が顧客の「意思決定」に結び付いていない
顧客は買主・売主・仲介業者など様々ですが、それぞれどのような目的を持って調査を依頼したのか、どのような意思決定を控えているのかに着目する必要があります。そして、その意思決定に役立つものとしてホームインスペクションを接続し、伝えることが先決です。
単に「劣化有無を調査します」と伝えるだけでは抽象的で、顧客の意思決定に結びつきません。
「何に役立つのか」を顧客毎に伝えて初めて必要性が自分事になります。
【顧客ごとの主な目的】
- ・買主:建物状態の理解、購入時の不安解消、購入後の維持計画の材料
- ・売主:建物状態の整理、価格の適正化、将来の維持保全情報の提示材料
- ・仲介:取引の透明性向上、トラブル防止
【今日からできるアクション】
- ・初回案内で「買主・売主・仲介」それぞれ向けの “何に役立つのか” を1枚配布
- ・過去のインスペクションがどのような意思決定につながったのか事例の収集

要因2:「報告書」が理解・活用しづらい
専門用語が多く形式的な内容では、読み手が “どこをどう理解すればよいか” が判断できません。
専門家には心地良いが、顧客には伝わりづらい——。結果、説明工数が増えることも。。。
狙うべきは誰が見てもわかる品質と、後工程(説明・記録・維持計画)で材料として”使われる”形です。
特に、報告書を取引の重要材料として活用する場合は、その分かり易さは取引の円滑性を大きく左右します。
【今日からできるアクション】
- ・先頭にサマリーを作成。所見の要点、維持管理で参照すべき箇所を記載
- ・写真と位置図(番号・色分け)で結果を説明
- ・専門用語には脚注の平易訳を併記
写真と位置図の作成におすすめなツール「smart tag camera」については👉こちら
要因3:「スケジュール」が顧客に寄り添えていない
「予定が組みづらい」「手続きが煩雑」と感じられると、顧客は行動を止めるかもしれません。
結果的に競合他社に依頼が流れたり、インスペクションの実施自体が見送られてしまいます。
必要なのは、顧客側の動きに合う段取りの見える化とスケジュール調整です。
【今日からできるアクション】
- ・HP等に ”おすすめ予約タイミング” や ”予約に必要な情報” を掲載
- ・受付時に全体タイムライン(予約→調査→報告)を共有
- ・調査後24〜48時間以内の速報サマリーで、待ち時間の不安を軽減

要因4:「価格・調査範囲」が複雑で紛らわしい
「いくらなのか」「どこまで見てくれるのか」「追加は何で発生するのか」が直感的に分からなければ、判断は止まります。
そのため、誤解を招かないシンプルな価格設定と調査範囲を設計しましょう。
特に住宅購入を検討している買主や斡旋する仲介業者にとって、資金計画の都合から明瞭な見積が求められます。
顧客の状況を踏まえた上で、選ばれるインスペクションのサービス設計が重要です。
【今日からできるアクション】
- ・料金表はシンプルに。プラン化が最もわかりやすい
- ・カバレッジ表(含む/含まない/オプション)も一緒に掲載
まとめ:顧客視点でサービスを設計し直しましょう!
ホームインスペクションはその専門性から、顧客にとってわかりづらいサービスに一件見られます。
そのため、より一層、顧客目線に立って、価値の翻訳・活用の支援・プロセスの設計を最適化し、顧客に合わせた「伝え方・進め方・使われ方」で価値提供をする必要があります。
件数増加の鍵は、まさにここにあり!——。上記の観点で運用を見直して、一つずつ進化していきましょう。
何事も早め早めに。今から始めておけば安心です。
