【コラム】長期優良住宅化リフォーム推進事業とインスペクション
国土交通省が推進する「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は、良質な住宅ストックの形成や、子育てしやすい生活環境の整備等を図るため、 既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームや子育て世帯向け改修に対する支援を行う事業です。令和7年度は2025年5月20日から事業者登録や住宅登録の受付が開始されています。
また、本事業の要件として、対象住宅に対する事前のインスペクション(建物状況調査)の実施と、調査結果を元にした補修計画の策定も求められています。
長期優良住宅化リフォーム推進事業 とは
長期優良住宅化リフォーム推進事業は、インスペクション、性能の向上を図るリフォームや三世代同居等の複数世帯の同居への対応に資するリフォーム、適切なメンテナンスによる既存住宅ストックの長寿命化に資する優良な取り組みに対し、国が事業の実施に要する費用の一部について支援することにより、既存住宅ストックの質の向上及び子育てしやすい環境や防災性、レジリエンス性の向上の整備を図ることを目的とします。
■補助対象事業者
- ・リフォーム工事の施工業者
- ・買取再販業者
■補助対象費用
- ・以下のリフォーム工事に係る費用
- ・特定性能向上リフォーム工事
- ・その他性能向上リフォーム工事
- ・三世代同居対応改修工事
- ・子育て世帯向け改修工事
- ・防災性の向上、レジリエンス性の向上改修工事
- ・以下のインスペクション等に係る費用
- ・リフォーム工事に先立って行う既存住宅のインスペクション
- ・リフォーム工事の履歴情報の作成
- ・維持保全計画の作成
- ・リフォーム瑕疵保険
■事業タイプ毎の補助限度額
- ・評価基準型・提案型:80万円/戸
- ・認定長期優良住宅型:160万円/戸
- ・※以下の場合、50万円を上限に加算
- ・三世代同居対応改修工事を実施する場合
- ・若者,子育て世帯が改修工事を実施する場合
- ・既存住宅を購入し改修工事を実施する場合
※事業概要の詳細はこちら
補助金申請の要件
長期優良住宅化リフォーム推進事業を利用するには、下記の条件を満たす必要があります。
■補助金申請の要件一覧
- ・リフォーム工事前にインスペクションを行うとともに、維持保全計画及びリフォームの履歴を作成すること
- ・インスペクションで劣化事象等不具合が指摘された場合、以下のいずれかの措置をとること
- ・リフォーム工事の内容に含めて改修
- ・維持保全計画に補修時期又は点検時期を明記
- ・リフォーム工事後に次の性能基準を満たすこと
- ・<必須項目>劣化対策、耐震性(新耐震基準適合等)、省エネルギー対策の基準
- ・<任意項目>維持管理・更新の容易性、高齢者等対策(共同住宅)、可変性(共同住宅)の基準
- ・上記性能項目のいずれかの性能向上に役立つリフォーム工事、または三世代同居対応改修工事、子育て世帯向け改修工事、防災性・レジリエンス性の向上改修工事のうち、一つ以上を行うこと

事前インスペクション とは
補助金活用にあたって、必須となるのが事前のインスペクション(住宅診断・現況調査)です。
インスペクションでは、住宅の現在の状況(劣化の有無)を調査します。調査の結果判明した劣化事象については、リフォーム時に補修を行うか、将来補修かを検討し、維持保全計画書に劣化事象の点検・補修等の対応方法とその実施時期を明記する必要が有ります。
工事前にインスペクションを行うことで、住宅の劣化状況を正しく把握し、適切なリフォームを行うことができます。
■インスペクションの実施方法
- ・調査内容は、「既存住宅状況調査」 (建物状況調査)とする
- ・実施者は、既存住宅状況調査技術者とする
- ・実施時期は、工事着手前1年以内とする
■インスペクションの調査内容
- ・構造耐力上主要な部分の調査(基礎・土台・柱・梁など)
- ・雨水の浸入を防止する部分の調査(屋根、外壁、窓周りなど)
- ・設備配管(給水・給湯・排水管・換気ダクト)
※インスペクション実施内容の詳細はこちら
インスペクション報告書の内容
通常、インスペクションの報告書には劣化有無を記載したチェックシートに加えて、裏付けとなる現場の写真や劣化の位置を表す図面等が添付されます。これらの視覚的な情報は、建物の現況を正確かつ客観的に把握するために役立ちます。
また、一般の方でも理解しやすい報告書であれば、リフォーム計画検討の際にも認識のズレなく進行することができるだけでなく、リフォーム前の状態を記した資料として将来的にも役立つケースが多くあります。
ただし、これらの報告書はアナログな手法(カメラで撮影・図面へ書き込み・PCで写真整理・報告書へ転記)で作成されることが多く、報告書の提出は調査後3〜7日程度を要するケースが多くなっています。


最新のインスペクションについて〜写真アプリによるDX化〜
実は昨今、住宅をはじめとする建物調査・インスペクションの現場では、デジタル化やDX化が進みつつあります。
特に、上述した写真台帳や位置図の作成負担を軽減することで、効率的で高品質な調査報告が実現されるようになってきました。
例えば、最新の運用では、専用アプリで現場の状況を撮影・記録すると自動で図面付きの報告書が作成されるようになり、報告までの時間を短縮する事例も生まれています(事例の詳細はこちら)。

このような取り組みは、技術者の人手不足や高齢化が加速する時代において、生産性を保ち、建築ストックの流通や適切な維持管理を促進するために有効です。今後も補助金による既存建築の長寿命化の促進と合わせて、それを支える技術者の運用改善も進むことで、良質な建築ストックの形成が加速すると予想されます。